「エチュード」というのは音楽用語では練習曲、つまり本作ではなく習作なのである。
こんな名の付いたマツダ車があった。
ファミリアの上級版パーソナルクーペといったところである。顔つきはファミリアよりは
落ち着いた、大人っぽい仕上げになっており、グラスエリアの強調されたボディは垢抜けした(都会的な)
雰囲気を持っていた。機械的なものはファミリアそのものであったため、雰囲気を求めて乗る、
全くファッション的な思想の元に生まれた車であったことがわかる。若い女性のピアノの先生が
街で乗る、というようなイメージを描いてデザインしたのだろうか。
ホンダが、「プレリュード」「コンチェルト」「バラード」など、音楽用語に由来する車名を連発している中で
敢えて付けた「練習曲」の名。その意図するところはいかなるものであったのか。
ファミリアの成功により練習作を生産、市販するまでの余裕を得た、ということなのか
売れない、と見ると2年そこそこでマツダはこの車の生産をやめてしまい、以後同名車を
出すことはなかった。しかし、生産中止になってからこの車をたまに見かけることがあると
改めて斬新なセンスに気付かされることがある。
エチュード 1987−89
エチュード以前、そして現在も横止まりになっているのが当然のリヤワイパー。これを
敢えて縦止まりにしてある。俄然、ワイパーの存在感が際立ってくる。必要機器としての
立場を越えてアクセサリーとしての役をこなしているのである。フラッシュサーフェイスで
のっぺりしがちなリヤビューにアクセントとして働くリヤワイパー。邪魔者として目立たない
処理をされがちなワイパーを、このような形で生かしたセンスは評価できる。これより前後
のスポーツ車の中には縦止まりのリヤワイパーを採用するものも数例あった。しかし、
エチュードほど巧くリヤワイパーを際立たせたものは未だに無いように思えるのである。
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