今の世では、「グリーン」「ボランティア」「エコ」などという言葉が付きさえすれば
全てはフリーパスのような雰囲気になっている。つまり、巧くそれを利用すれば
本来認められないようなものさえ、容易に世間に呑ませることができるのである。
「エコ」は今や水戸黄門の印籠の意味を持つ語句となった。この言葉が付いたことには
誰も反対しない。「ハイブリッドカー」についても同様である。人気取りのため、こぞって
市町村長が公用車をプリウスに換える様子は滑稽ですらあるのだがこれを誰も批判しない。
トヨタが目を付けたこれらの言葉の効果は絶大なものである。自社の持ち玉「プリウス」
の存在を強調し、トヨタの奥田氏が経団連会長であった時代に設定されたグリーン税制には
マスコミも全く批判を加えることはなかった。疑問さえ持たなかったであろう。
13年(ディーゼルは11年)を越えた車について罰則的な増税を課し、廃車に追い込む
という手法は「環境のため」という目眩ましが掛かっているため誰もが当然のように思っているが
実際はシェアが最も多い自動車会社に有益に作用するマジックである。
例えば日本の自動車保有台数が1000万台であるとする。車の寿命がきっちり1年であるならば
次の年には全て買い換えなくてはならなくなり、次年には1000万台の車が売れることになる。しかし、
車の寿命が20年ならば、次の年の需要は20年目を迎える車のみ、平均的にいえば1000万台の
20分の1である50万台のみの販売となる。つまり、車の寿命が長ければそれだけ新車が売れる
チャンスが減るため、自動車会社としては早く廃車にさせた方が販売実績は上がるわけである。
しかし、品質を落として早くダメになる車を売ったのでは自社の評判が下がるばかりでいいことはない。
制度的な旧式車の抹殺を図らなければならない。かつては12年越えの車に毎年車検を課して絶命を
促進していたが、景気がよくなり黙っていても車が売れる時代になって規制緩和が進んだときにその枠は外れた。
もう一度車検制度を元に戻すのは合理的説明が難しい、ということもあり持ち出されたのが
「自動車税のグリーン化」であった。一方に低公害車とされる車を用意しておき、それを購入すれば
優遇。購入せずに今までの車を乗り続ける人には「環境に配慮がない」として罰則を加える。
日本の自動車保有台数は約7500万台。その中から毎年500万台ほどの廃車が出る。
全体の15分の1程度である。単純にいえば新車から約15年で廃車になっているということになるが
それを13年に短縮させていく効果が「グリーン税制」の裏の狙いであろう。先ほども述べたように
日本の保有車両が15年に1回新車に更新されるのと13年に1回の更新では総販売台数が
変わってくる。当然総販売台数が増えればシェアが最も多い会社にその多くの利益が流れこむという
ことになる。まさにエコマジック。グリーンマジックである。プリウスはマジックの種であり、
決して環境改善を主目的として出された車ではない。トヨタが本気で「ハイブリッドは環境のために
不可欠な車なのだ」と思っているのであれば、カローラ、ヴィッツの主力にハイブリッドを据え、
量産効果でどんどん安く、大量にハイブリッドを市場に送り込んでしかるべきである。
それをせず、ハイブリッドにプレミアム的な立場を維持させて制度をいじる材料にしていることが
「トヨタは本気で環境改善を考えてはいない」ということの証なのである。
13兆円もの内部留保をため込みながら、経済危機という流れに乗り、今まで利益を生み出してくれた
労働者を率先して切り落とすトヨタの体質が明らかになり「世のため、ひとのため」など全く考えていない
会社であることを図らずも今回世間に広く知らしめることとなった。数々のマジックがバレかかっている。
怖れるのはそれらがバレる前に、販売改善を狙って「グリーン税制改訂により罰則は10年超の車から」
などとトヨタ首脳が再び提案して政治を動かし、利益を確保しようとするのではないかということである。
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