エスティマ(初代)

 

 

 

商用車流用の車体で内装をオーバーデコレーションしたものが多人数用車として

当たり前だったところに現れた「天才タマゴ」。商用車のにおいが全くしないばかりか

新しいジャンルを切り開いたのではないかと思わせるほどの大胆なデザイン。

1990年、一気に他のワンボックスを旧態化させる衝撃のデビューであった。

 

 

エンジンを傾けて押し込み、実現したとされる平床。過度に高くならなかった運転席。

ワンボックスの真っ平らな鼻先に比べればより乗用車に近い感覚のノーズ。

デザインに惚れ込み購入を希望する人は多かったが、発売当初の大柄な車体と

高めの価格。そこに引っかかって二の足を踏む人もまた少なからずあった。

 

コンパクトながらエスティマのエッセンスを受け継ぐエミーナ

 

そこで1992年、トヨタが送り出したのは縮小版とも言える、エミーナ/ルシーダ

であった。エスティマが日本には大きすぎることはトヨタも予測していたのか、

縮小版は予め用意されていたとも伝えられる。こちらはより多くの層に受け入れられ、

街のあちこちで大きなタマゴが走る様が見られるようになった。エミーナ/ルシーダを本来のエスティマと思っている人も多かった。

 

 

この車に実際に乗り込んでみると、今までワンボックスに乗っていた感覚からすると

土管に潜り込んだような圧迫感を感じたものである。四角い商用車の車体を流用した

ワンボックスはやはり空間的には有利で、空間を丸く絞り込んだエスティマの内部は

外装デザインのための犠牲になっている部分が確かにあったと言える。後席の窓が

巻き下げられないことや右側後席ドアがないなどの使い勝手も商用車ベースのものに見劣りするところであった。

 

 

 

しかし、当時はセダンから乗り換える人々が圧倒的に多かったこともあって

それでもエスティマの内部は広く見えたはずである。操作性もワンボックスとは

比較にならないほど良好といわれたこともあり、この車でミニバンに目覚めた

人も多かったようだ。そしてその流れは90年代半ばからの大規模なミニバンブームにつながってゆく。

 

現在は改造車のベースとなってしまったものが多い

 

 

その後、ブームに乗って各社から、またトヨタの同門からも大量のミニバンが送り出された。

そうなってくると、やはり空間的に有利な方形のものが主流となり、円い筒のようなエスティマは

モデルチェンジによって他のミニバンと大差ない形に落ち着いてきた。豪華な現行形は機能的には

初代に大きく優っているかもしれないが、消費者の意向を取り入れざるを得なかった妥協点を

多く持っている形になっていることは否めない。その点、初代であるが故に消費者の要望など

気にせずに形を決めることのできた「天才タマゴ」はやはり歴史的なグッドデザインであった。

 

当初、2サイクルのコンパクトエンジンを乗せる計画だったという先鋭的な実験車の性格を持つ

エスティマが、10年を越える大ミニバンブームを起こし、さらには日本車の標準型からセダンを追い出して

しまうことになろうとは、開発者も全く意図しなかったことであっただろう。

 

 

1990−1999 初代

 

 

 

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