この車を世の中に出したダイハツは偉いと思う。
かつて零細運搬に貢献していた三輪自動車も今では全く四輪軽トラック、ワゴンに取って代わられ、ほぼ絶滅した。
しかし、日本には相変わらず路地の奥にも民家は存在し、そこまでの運搬の需要もある。ミゼットは、他社が見捨てている
その零細需要を形にした。軽トラックより更に細い道にも入っていける小振りな車体を実現するために車室、荷台を削り、
三輪車に匹敵する小回りをこの車に与えた。おそらく、現在の役所が認めるものなら三輪でやっていた可能性もあるのでは
と思わせるほどである。車室スペースを絞り込むと需要層も絞り込まれ、売れ行きにも大きく影響するのだが、あえてそれを
成し遂げたことは、車体が膨れる一方の軽自動車のあり方を問い直していたのではないかと思う。驚くことに、後日このスペースに
二名分の座席を詰め込んで見せたのだが、ぴったり寄り添うように乗らねばならない乗車姿勢は一度乗ったら忘れられない
話の種にもなるものであっただろう。普通の車ではメーカーへの苦情となるようなこれらのことも、愛嬌として受け入れられる。
丸形2灯は車体の外側に張り出し、鼻先に積まれたスペアタイヤとともに良い表情を作り出している。スペアタイヤの
収納は、この小さな車体には問題点だったと思うが、それを見事チャームポイントに変えたデザインの発想転換が功を奏していた。
後期型が軽自動車の規格変更に伴ってこの位置からスペアタイヤを移動させたのは単に安全上の措置であり、
デザイン上のマイナスは承知の上でのやむを得ない措置であっただろう。左右のミラーにしても自動車というより二輪車の
延長として発生した軽三輪の特性を彷彿とさせ、既製の四輪車と比べてマイナスを述べることの無意味さを知らせている。
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