1991年、のちに云われるバブル期にユーノスブランドで現れたマツダ車。
当時既に下火になりつつあったリトラクタブルライトを採用せず、表情を持った
コンパクトクーペとしてデザインされていた。少々腰高な感じはしたものの、
まとまり感のあるグッドデザインの一台であった。
この車には当時の1800ccとしては非常に贅沢なV型6気筒エンジンが搭載されていた。
姉妹車として現れたAZ−3にはマツダの中では廉価ブランドのオートザム所属であったため
同じ形ながら4気筒エンジンが積まれた。台車は共にファミリアでありエンジンの質感はプレッソ
に若干の利があるものの、車体は同じであるためそれほど差別化はできなかったらしい。
AZ-3
プレッソ
お金のかかった曲面ガラスを採用してクーペボディを成立させているが、
尻を高く持ち上げていることもあって後席の頭上も決して狭くないというのが
この車の意外な特徴であった。後席側面のウィンドウが省略されているため
二人乗りにさえ見える車が持つこの特徴は、形だけでなく機能のことも考慮した
高度なデザイン作業が行われたことを物語っている。公式には明らかに
されていないものの、ポルシェの手を借りた形跡があるとの話もあった。RX−7
が「プアマンズ・ポルシェ」と云われていた頃でもあり、事実かどうか興味深い。
バブル後のオートザム、ユーノスを含むマツダグループ経営総崩れのせいもあり、
車そのもののイメージも軽視されるようになってしまったものの、この車の持つ
「2シーターに見えて後席も荷室も確保している」という美点を成立させたデザイン
技術はもっと評価されて然るべきであると思う。室内空間確保のためには
デカイ図体が当たり前、というミニバンデザイン方式全盛の今では消えてしまいつつある智慧の結晶だからである。
1991−1997
TOYOTA NISSAN MITSUBISHI MAZDA HONDA DAIHATSU SUBARU SUZUKI ISUZU 他