昭和40年代の頃まで、多くの車に採用されていた三角窓は、エアコンの普及していない時代にあっても
多量の強制外気導入に役立ち、夏場でも涼しい状態に車内を保つために大きく役立っていた。当時の
車は優れた換気システムを持ち、カパッと蓋を開けるとドッと空気が流れ込む空気導入口も用意され
ていた。しかし、エアコンの普及と共に三角窓は「視界を遮る」「雨漏りが心配」「古くさい」などの声に
押され、電動ファンを介しない空気導入口と共に時代のお払い箱と判断されてしまったようだった。
三角窓がない車が「新しい」ともてはやされ、三角窓を新たに付ける車はほとんど無くなった。
昭和50年代にはすでに、マツダポーター、117クーペとフローリアン、プレジデント、センチュリー、
あとは数種の作業車、オフロード車類に装備されるのみになっていた。とはいえ、現在のように
エアコンの標準装備が当然というわけでも無かったため、廃止した車は室内冷却、換気には不利
になるだけだった。それでも古くさいデザインを一新、というわけで「陸のシーラカンス」と
いわれた三菱デボネアさえ三角窓だけは廃止したのであった。
やがてエアコンの普及が本格的になると今度は4ドアであっても後席の窓が開かない、という例が出てきた。
エアコンで温度調整をするから窓は開かなくていいだろう、という発想である。これは特急電車の窓が開閉
不可になっていることなどに影響され、しかもコストダウンに役立つということから出された結論だと思うが
ただでさえ閉ざされた車内空間をより閉塞的にする処理方法だと思う。私の場合、このような
「ドアがあるのに窓は開かない」という車は初めから願い下げである。
一方三角窓は全く絶滅したわけでもなく、突然不意に姿を現した。1981年のホンダシティ。この車には
三角窓がある。とはいっても以前のもののように開閉できるわけではなく、大きすぎてドアに収納できない
ドアガラスを縮小するための、調整的な役目を持ったものだったと思われる。当然換気には何の役にも立たない。
その後も消えては現れる三角窓であったが、ここにきてミニバンのいくつかにまた見られるようになった。
この場合はデザイン上、窓の端までドアとして開くことが難しいため、その部分を三角に残してしまおうという
ボディ側に付いた三角窓である。メーカーの説明では視界を遮るものではないという。それなら30数年前に
あの有用な三角窓を廃止しなければよかったではないか。真夏でもエアコン不要なほどに車内を冷却するあの窓を。
本来の役目を果たさない形だけの三角窓が増産されている。本来の役目を与えればエアコン使用量を
減らし、環境汚染の軽減に役立つはずなのにそうはならない。環境のためにはハイブリッドか燃料電池
車しかないと思っている。ハイブリッドのプリウスが数千台〜数万台日本を走っていようともその効果は
微々たるものである。それよりもこれから発売される車に全て換気型の三角窓を付けた方が
ずっと総合的に燃料節約になることを断言する。
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