車の名前は当然のことながら登録商標となっており、思いついたからすぐに
命名できるというものではない。自動車産業の黎明期にはメーカー、またはブランドの
名前に排気量をつけただけの車名が当然の如く相次いだ(三菱500、スバル1000など)が、
一社が多種の車を生産するようになってくるとそういうわけにもいかず、イメージに合わせた
サブネームまたは愛称を各社、頭を絞って考え、命名するようになった。
スバル1000
しかし、現在の生産車種だけの名だけでなく、これから使う可能性のある名前を
囲い込もうとするようになってくると、自社の製品に類似した言葉は無論のこと、
車名になりそうもない言葉まで念のために登録しておくということが広くおこなわれるように
なった。そのため、新たな車にイメージ通りの命名をおこなうことが困難になり、
場合によっては他社から権利を購入して車名を譲渡してもらうという例まで見られる。
トヨタソアラ
有名なところでは「ソアラ」はもともとダイハツの商標、「プレリュード」はトヨタの所有だった、
「サニー」の商標権はソニーが持っていたなどの裏話がある。現在も明らかになっていないながら
同様のことはおこなわれているであろう。また、そういった車名の売買を嫌う場合には
独自の造語という形で、意味づけをし、切り張りをした言葉を生み出し命名する。
当然、日本語でも外国語でもないため辞書にも載っていない言葉が車名となるのである。
イタリア語の「空間」を意味する言葉を変形した「スパシオ」、「エディット」+「シックス」の
「エディックス」、古くは「ジープ」+「ミニ」の「ジムニー」など日本の車には造語が多い。
無理してつなげ、混ぜ合わせた度合いが強すぎて輸出には使えない例も多いようだが
国内向けには語感さえしっくりくれば別にかまわないと思う。無理して意味のある外国語を
探して変な音の車名にしてしまうより、音のよい言葉を考え、命名した方が違和感がない。
トヨタイプサム
ラテン語で「本来」を意味するという「イプサム」は個人的には語感的に最も違和感のある
車名である。「いぷ」で始まる言葉がない日本語の中にあって、登場時のその違和感は
格別なものがあった。トヨタもそのあたりを気にしていたのか、「イプー」というキャラクターを
作って「いぷ、いぷ、いぷー」とCMのなかで叫ばせていた。耳に馴染ませようとしたのだろう。
これほど苦労するのであれば旧来から使用している車名をもっと大事にすればよさそうな
ものだが、古いイメージの一新の名の下に使い捨てられる例はあとを絶たない。それでも最近は
「コルト」「R2」「ライフ」など、一度廃した名を拾い直す場合も散見されるようになり、車名の
やりくりの大変さを物語っている。今は廃版になっている名もいずれ引っぱり出されるであろう。
TOYOTA NISSAN MITSUBISHI MAZDA HONDA DAIHATSU SUBARU SUZUKI ISUZU 他