よく、トヨタのデザインは「3年経つ頃には飽きるように仕上げられている」という言い方がされるが、実際はそうではあるまい。
まず、デザイナーとして初めから「飽きるデザイン」を目指す者はいないであろう。その時その時
売れると思われる形を目指すであろうし、天下のトヨタのデザイナーとして全力を挙げているはずだ。
出来た形もその時の消費者が「いい」と思うから売れてゆくのである。
しかし、トヨタのデザインが「飽きられやすい」という事実はあると思う。それは計画的に飽きられる形を
目指したからではなく、トヨタの宿命とも言える、「大量販売」の弊害(?)だと思われる。いくら気に入って
買った物でも、日に日に同じ形のものが身の回りに溢れれば自分の中での価値は低下して行くであろう。
デザイン自体の性質によるものではなく、「数」のもたらす結果なのだと思う。
溢れるほど大量に売れた
更にトヨタのみならず多くの社の車種は、ほぼ4年サイクルという短期間でモデルチェンジされてしまう。
見飽きるほど溢れた形に加え、新型の影がちらつけば買い換えの虫がうずいてしまうのも無理はない。
そのうえ、トヨタの主力車種は高人気のため下取りもよい。そのような総合的な力が働いて
3年買い換えのパターンを形作っていると思われるのである。
たとえば、いすゞの車だった117クーペがトヨタ車で、月に数万台も売れる人気車だったとする。
その上4年経ったらあっさり新型にバトンタッチ、ということになっていたら117クーペのデザインにも
多数が倦怠を感じていた筈である。車のデザインにはそういう相対的な部分があって、本体がいくらいいもの
でも、他人が軒並み同じものを持っていたら価値を感じられなくなってしまうものなのである。
「希少価値」を許されないトヨタ車はそういう意味ではハンデを背負っていると言える。
飽きるほど売れてしまう?
「爆発的に売れ」て、且つ「3年で飽きる」要素をデザインに盛り込むことが出来るとすれば、それは
かなりの技量を必要とする。もしかすると、「人気の衰えないデザイン」を実現するよりも困難なことかも知れない。
その意味ではトヨタデザイナーに被せられた「3年で飽きるデザイン」の技術容疑は過大評価でもあると言えるはずである。
初代カローラ
一時確かにありふれて見飽きてつまらなくなったデザインも、見かける機会が激減すると
違って見えることがある。初代カローラなどは確かに爆発的に売れはしたが、末期には
「平凡」「つまらない」とされてどんどん破棄されていった。誰も希少価値をこの車には認めなかった結果、
残存数は極端に少なくなってしまっている。
カローラの他にも滅多に見かけることの無くなってしまったトヨタ車をたまに見かけると、決して
飽きることを前提にデザインされた車ではなかったことを改めて思わせられる。例外はある
ものの、やはりその当時の担当デザイナーが全力を注いだものであるに違いない。
とはいえ最近のコンピュータデザインの車についてはその限りではない。
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