車の全長の出来るだけ多くをホイールベースに当てると乗り心地、直進安定性が良くなる、
ということから、車が進化するにつれ、オーバーハングの少ないデザインが幅を利かせるようになってきた。
軽自動車、コンパクトカーと呼ばれるジャンルでは元々の大きさが限られており、その中で
なんとか居住空間を確保しなければならないため自然にタイヤが車の四隅に追いやられる。
それは機能的な制約の中でのやむを得ない処置ということになるのだが、近年はそういう車種
に限らず、3000ccを超えるような大排気量車でさえもオーバーハングをギリギリまで切りつめる例が多くなってきた。
アウディTT
フェアレディZ(現行)
こうした車のデザインは、オーバーハングは極力排除すべきものとして成立している。
こうしたデザインは「機能的」ではあるだろうが、反面、余裕のなさが滲み出す。
オーバーハングの否定は「限られた長さを出来るだけ有効に使わねばならない」という
発想に基づくもので、大きさ的に制約の少ない車種ではデザインの優先事項ではない。
もちろん、大きな車ほど狭い道での取り回しがしやすいようにとの配慮も働くであろうが、
取り回しが最も気になる方々はコンパクトな車種を選ぶべきなのである。
クライスラー
大きさに余裕のあるアメリカ車は充分な室内空間を確保した上で更に長大な
オーバーハングを残した。ここまで長いと却ってバランスが悪いが、あまりに切りつめた
場合もまた、バランス的に優れているとは言い難い。過去のフェアレディZの先端部分など
は機能的に意味のあるものではなかったが、車の魅力を醸し出すには充分に役立っていた。
フェアレディZ280
オーバーハングの極端に短い車が伸びやかな線を描くことは難しく、どうしても「ずんぐりむっくり」の
印象を免れ得ない。現行のフェアレディを購入する人々のほとんどは過去のフェアレディZに憧れて
同じ名の車を購入している。現行のものと性能が同じで過去のボディスタイルが選べるとしたら、
240ZGや280を選ぶ人は多いのではないだろうか。
アルシオーネ
アルシオーネは短い車台(レオーネ)で長い車を造ろうとして極端なオーバーハングが出来てしまった例で
ある。バランスを考えればもう少しホイールベースが長い方がいいのだろうが、オーバーハングが長くなることを
怖れず、表現したい形に挑戦した点では評価できる。機能最優先でできあがるグッドデザインも中にはあるが、
反対に機能を損ねない範囲で許される形の限界に挑むデザインがもっとあってもいいのではないかと思うのである。
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